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大楠に感嘆!宇美八幡宮参拝

福岡市の神功皇后ゆかりの主な神社はほとんど海の近くにありましたが、宇美八幡宮(うみはちまんぐう)は山に囲まれていました。

 

博多駅からJRで福北ゆたか線の長者原駅で香椎線に乗りかえ、終点宇美で下車。

宇美駅前で県道60号線を渡ると「ふれあい通り」という標識がある、わりと道幅の広い商店街があります。レンガのようなオレンジ色の石で舗装された道が続いているので、その道なりに5分程歩くと県道に突き当たり、宇美八幡宮の隣にある町立歴史民俗資料館の脇に出ます。


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宇美八幡宮の御祭神は応神天皇、神功皇后、玉依姫命、住吉大神、伊弉諾尊です。

三韓征伐から戻られた神功皇后が産所を定め、応神天皇を生んだのが宇美八幡宮の地です。


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神功皇后は朝鮮半島へ渡る際、お腹に石を当てて出産を遅らせたとされますが、戻って海から離れたこの地まで出産を我慢するのは大変だったのでは、と思わせるような海から離れた場所でした。

 

神功皇后が応神天皇を出産された地ということで、「安産・育児」の信仰が特に篤く、安産祈願や御礼参りが多い神社です。この日も家族連れの参拝者を多く見かけました。

 

社殿はどっしりと落ち着いた造りです。重厚感よりは安定感のある美しい社殿です。


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境内にはこの地への長い信仰を物語る文化財が数多く存在していました。

本殿脇の「子安の木」は、神功皇后がその木の枝にすがって応神天皇を安産で生んだと伝わっています。


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木としては大きくないのですが、今も種を絶やさないということなので代々この場所に生えかわっているのでしょう。

 

奥へ進むと楠の大木があります。

注連縄が掛けられ、根元近くに石の社があり見上げるほど立派な楠です。


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が、さらに進むと天然記念物に指定された樹齢二千年を超えるとも言われる「衣掛けの森(いかけのもり)」という老大楠があります。


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これまでいくつかの神社で素晴らしい楠の巨木を見ましたが、これほど大きな楠は初めて見ました。「衣掛けの森」とはよく言ったもので、一本の木なのにまるで森のようです。

社殿を挟んで反対側には同じく天然記念物で樹齢二千年を超える「湯蓋の森(ゆふたのもり)」があります。こちらも同様に素晴らしい巨樹です。


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この巨樹の下で産湯をつかったことから「湯蓋の森」、また産衣を掛けたことから「衣掛けの森」の名がつきました。

 

「衣掛けの森」のそばには御神水「産湯の水」があります。


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応神天皇が生まれたとき産湯に用いた水で、今も妊婦の方の安産の霊水、産湯としてこどもの健康を祈るそうです。


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本殿の裏手には普通の神社では見かけない光景がありました。


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末社、湯方社(ゆのかたしゃ)を囲むように石が積まれています。

安産祈願した妊婦さんが“お産の鎮め”としてここの石を持ち帰り、出産後、別の新しい石にこどもさんの名前等を書いて、初宮詣のお祓いの後に持ち帰った石と一緒に納める習わしだそうです。

湯方社のご祭神は湯方殿で、助産師の祖となる神です。

 

聖母子像。


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聖母宮(しょうもぐう) は応神天皇の安産に因む信仰から、その母である神功皇后をお祀りしています。福岡県指定文化財の「聖母宮御神像」がお祀りされており、「二十五年に一度」御開帳されるのですが、今年平成三十年がちょうどその二十五年に一度の年で、この日御神像を拝観することができました。

毎日拝観できるわけではなく、開帳は毎月五日の月次祭、戌の日、土、日、祝日の九時から十六時となっていますが、荒天日は開帳しないこともあるようです。


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全身を写すのは憚られましたので見づらいでしょうが、思ったよりも大きな像でした。


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この後、本殿裏手の鳥居から境内を出て、正面に見える小高い丘の上にある「胞衣ヶ浦 (えながうら)」へ向かいました。


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丘の麓には宇美川が流れています。


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応神天皇が生まれた時に胞衣(えな)を宇美川ですすぎ、筥に入れて山(胞衣ヶ浦)に祀ったとされ、祠を建てお祀りしています。


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宇美八幡宮のみならず、辺り一帯を見下ろす眺めのいい場所です。


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古来、胞衣はその子の体や霊魂の一部とみなしているところが多く、その人の命を左右する力があると信じられていたと、読んだことがあります。

その多くは土中に埋められたようで、土地によって「よく踏まれる場所に埋めた方がいい」とか、「踏まれない場所がよい」とかあったようです。

 

応神天皇の胞衣は人に踏まれないところに埋められたようです。

 

筥崎宮の筥松も、応神天皇の胞衣を筥に納めて埋めた場所に目印として松を植えた、という伝説があります。海辺の明るい筥崎宮に埋められたのか、周囲は山と川に囲まれた静かな丘に埋められたのか興味深いところですが、どちらも胞衣を大切に埋めたということでは共通しています。


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安産育児で有名な宇美八幡宮ですが、神社の側には小さな川が流れていて、その奥の丘の麓には宇美川もあり、水と緑の豊かな土地です。


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楠の巨樹が境内に多くあるのも、この地が信仰の地として守られたことだけでなく、豊かな水や空気に依るところがあるのではと思われます。


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あの大楠をまた見に行きたい神社です。