言葉のカタチ

言葉にならないものをカタチにしよう

「好き」をためらわない

昔同じ職場で働いていた子が、今、仕事でとても活躍しています。テレビにも出演し、県からも表彰されました。

お互い二十代の頃、一,二年程一緒に働き、その職場を揃って辞めました。その後もお互いの家を行き来していたのですが、いつのまにか年賀状のやりとりも途絶えてしまいました。
それでも彼女の活躍は、地元にいる私の家族から聞いていました。


当時、彼女は元気がよく、明るく、優しい子でしたが、ごく普通の子でした。
とても動物が好きな子でした。今の仕事も動物に関わりがあります。
何より彼女は、自分がそうしようと思ったことは、ためらいなく実行する子でした。

職場の敷地内で拾った鳥の卵を孵す、と言って電気あんかを職場に持ち込み、絶対に無理だとみんな思っていましたが、本当に孵化させました。

うさぎのブリーダーをすると言って、自宅で繁殖させブリーダーもしました。

ある時、ベートーベンの「月光」が好きで、自分で弾きたいからピアノを習う、と聞きました。半年くらい経って家に遊びに行ったとき、彼女はピアノを聞かせてくれました。見事な「月光」でした。

私も小中学生の時ピアノを習っていましが、やめてしまうと指は動きません。
大人になってからピアノを始めて、半年で「月光」を弾きこなした彼女に本当に驚きました。

当時、彼女は結婚して小さいこどももいました。
四六時中ピアノにかじりついていたはずはありません。

何をするにしろ、彼女は「やりたい」と思ったら、すべきことにすぐに着手し、一生懸命取り組みました。
どれも悲壮感はまるでなくて楽しそうでした。

やりたいことを始める前に、先にあれこれと考えてしまって、結局手をつけなかったり、不安や心配で前に進めなかったりする私からすると、彼女の行動は呆れるほど、そして羨むほど軽やかでした。

あれから二十数年が経ち、今活躍している彼女の様子を聞くにつけ、「好き」をためらわなかったこと、考えるよりまず行動したこと、「好き」への集中力が、今の彼女を作っているんだろうと思います。

「好き」をためらわないこと。
簡単なことなのに、いろんな理由をつけて「そんなことは無理」と、つい言ってしまいます。
でも、人生でなにかひとつでいいから、「好き」にブレーキをかけずにやれたら!

彼女はそんな気持ちを起こさせてくれます。
今からでもできるよ、と。